熊野皇大神社

熊野皇大神社 (軽井沢)

2021年07月20日

長野県にある熊野皇大神社の天井絵の制作は、自分にとって非常に刺激的なプロジェクトだった。何枚もデッサンを描き、真剣に計画を練った末に、24枚の羽目板に金沢産の金箔2400枚を貼る構成にたどり着いた。制作は軽井沢のアトリエで行った。

この作品の題名は、弟橘姫(オトタチバナヒメ)が夫の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)に示した献身へのオマージュ。この作品は、軽井沢に居を移してから自分の人生を豊かにしてくれたことへの感謝を込め、軽井沢の氏神様に奉納したものだ。新しい社殿の天井に設置する大型作品を依頼されたとき、迷わず引き受けた。

このプロジェクトは、芸術的、精神的、そして個人的な観点から見ても、自分にとって理想的な仕事だった。15年前から取り組んでいる「武士道シリーズ」は、大阪のある神社を妻と訪れた際に構想を得たもの。その神社の歴史に触れ、感謝という一見単純に見えるが複雑な心のあり方について考えているとき、錆びた蝶番が目に留まった。その蝶番をじっと見つめ、金属が長い年月を耐える姿、そして観念も金属と同じように永続し、少々錆びついても根本的には変わらないことを思い浮かべた。

妻は神道の家系で、自分も神社を訪れるたびに心が安らぐ。軽井沢に住んで11年が経つが、その間ずっと熊野皇大神社を折に触れて参拝してきた。子供のお宮参りで祈祷を受けたのもこの神社であり、ここは自分たちにとって特別な場所だ。

大阪の神社を訪ねたときの経験を振り返ると、貢献や人々とのつながりの大切さ、そして愛する町や国への恩返しの思いが湧いてくる。そうした思いの中で、熊野皇大神社に貢献する機会をいただけたことは大変光栄だ。この作品がこれから長い年月にわたり、熊野皇大神社を訪れる多くの人々に喜びをもたらしてくれることを願っている。